とぼし財布のなかからそれでも手に入れたく本屋の店頭から去り難い本に出会うときがある。天から降った災難同様に避け難い心情に駆られる。
最近出会った本二冊。いずれも力作、大作である。一冊は平川祐弘先生の「アーサー・ウエィリー
ーー「源氏物語」の翻訳者(白水社)、もう一冊は金子民雄先生の「ヤングハズバンド伝」(白水社)
である。いずれもフランス文学の本で有名な白水社から出版されたものでよく出してくれたと心に銘じた。
両書ともに手に持つとズッシリとする量感があり、もちろんすぐれた内容を備えた質量は計り知れない。読みとおすだけで息切れがする。書きも書いたりと感嘆するばかりであるが、ウエィリーにしても
ヤングハズバンドの両人もどうしてこんな人生が過ごせたのかとあきれるばかりである。ウエィリーの
「源氏物語」から源氏を読みはじめたとする人が日本でも多いとか。正宗白鳥?もそう述懐していたと思う。勿論、微妙な表現は不十分であるとケチをつけている人もあるがそう云う人こそ翻訳に努めたら
どうか。
ヤングハズバンド伝はまだ拾い読みの段階だが、ないものねだりを許して貰えれば金子先生にはぜひとも他のシルクロードの探検家へデインやシュタインらの伝記も書いてほしい。心からそう願っている。古書通信社の八木社長は1915年生まれで昨年暮れに平凡社から新刊を出された。九十二歳。まだまだかくしゃくとされ前著の「古本薀蓄」(平凡社 12007)でゲスナー賞を受賞された。近く祝賀会が開かれ私もお招きをうけている。
上州中之条の金井幸佐久先生は百歳を超えてから「吾妻キリスト教史」をものされた。私が高野長英をかくまったことで知られる「景作屋敷」を訪れた際に高橋先生に連れられた金井先生にお会いしたことがある。白寿を間近にしていた。その後も何度となく文通を続けいろいろご教示いだだいた。質問するとすぐに返事が届き恐縮したものである。高橋景作研究で大きな足跡を残された。加えて吾妻教育史やキリスト教史に関した著作も多い。
とにかく世のなかには偉い人が多い。つくづくそう思う昨今である。